2026年4月20日(月)全社員へのClaude Code全社導入を正式に決定し、即日導入しました。
UNISPOT株式会社の代表海老です。

ここ2ヶ月、ずっと試行錯誤してきたテーマでした。


全社単位でのAI導入には、まだ抵抗感のある企業が多いはず

個人が生成AIを使うのは、もう当たり前の景色になりました。

ただ、「組織として」「全社員に」「業務の中心として」生成AIを導入する、となると、世の中的には一気にハードルが上がるフェーズだと感じています。

  • 情報セキュリティと漏洩リスク
  • 社外への守秘義務との兼ね合い
  • 社内向けの運用ルールと権限設計
  • メンバーごとのリテラシー差
  • 形骸化を避けるための評価制度との連動

社外に対してだけではなく、社内に対しても、何重もの対策を打つ必要がある。ここ2ヶ月、その設計をずっと詰めてきました。

一定の答えが出せたタイミングが、ちょうど今日だった、ということになります。


全社に配った目的は、コード書き(プログラミング)じゃない

Claude Codeと聞くと、エンジニア向けのコーディング支援ツールをイメージする方が多いと思います。実際、そういう導入事例がネット上には多い。

でも、UNISPOTの使い道はそれとは違います。

経営・デザイン・営業・バックオフィス──全員が同じClaude Codeを触る設計にしていて、コードを書かせることが目的ではありません。


本質は、「一次情報の集約」

今日いちばん書き残しておきたいのは、ここです。

全社員にClaude Codeを配って、会社として何をやりたいか。ひとことで言うと、一次情報の集約です。

  • 商談で顧客から拾ってきた生の言葉
  • 会議で「なぜその判断をしたのか」という背景
  • 現場で気づいた小さな違和感
  • ベテランが無意識に持っている判断基準
  • 断った案件と、その理由

こうした情報は、ほとんどの会社で口頭・チャット・個人の頭の中で流れて消えていきます。個人には残っても、会社の資産にはなっていかない。

一次情報が会社から流れ落ちていく構造を止めて、ちゃんと積み上げていくこと。これが、AIを全社単位で入れる本当の目的だと考えています。


大前提:「人間が主、AIは外付けハードディスク」

ひとつ、設計の大前提について書いておきたいことがあります。

最近、XやAI系の発信で「AIによる完全自動化」「人間不在のエージェント運用」という話がよく流れています。正直に言うと、私はその方向性にはかなり批判的です。少なくとも、今のフェーズでは。

一次情報というのは、その情報を持っている従業員本人が、中身を理解していることにこそ価値があります。

  • 顧客の本音を、「聞いた本人」が咀嚼して理解している
  • 現場の違和感を、「気づいた本人」が言葉にしている
  • 判断の背景を、「判断した本人」が説明できる

この「人間が理解している」状態をすっ飛ばして、いきなり「AIが全部やる」方向に向かうと、なぜそう決めたのかを会社の誰も説明できない組織ができあがります。スピードは上がるかもしれないけれど、組織としての地力はむしろ落ちていく。

UNISPOTが今やっている設計は、ひとことで言うと、こうです。

人間が主。AIは、その人間の”外付けハードディスク”。

メンバーがAIを相棒にしながら情報を集め、整理し、残していく。集まった情報を使って判断するのは、あくまで人間。AIはその人間の記憶と思考を拡張するための装置として置いています。

なぜ、今、人間中心なのか。

今のビジネスは、結局のところ人と人とのコミュニケーションで成り立っているからです。

顧客との商談も、社内の意思決定も、採用面談も、パートナーとの交渉も、最終的には人と人との対話と信頼の上に乗っている。ここをAIで”スキップ”しようとしても、相手が人間である以上、最後は「人が人と話す」瞬間に必ず戻ってきます。

情報を咀嚼して、相手と対話できる”人”が主役でいるほうが、今のビジネスには自然にフィットする。

ただし、これはあくまで今時点の話です。

ゆくゆくはAIが主導で動き、「そもそもこの情報が必要か?」という選別すらAI自身が担う時代が来るかもしれません。社会そのものがAI前提に組み替わっていけば、答えは変わっていく。

でも、今のフェーズで組織の地力が積み上がる設計は、人間中心のほうだと私は考えています。

完全自動化の議論は派手で目を引きますが、地に足のついた議論は、まだこっち側にあるはずです。


コツ① 長期記憶と短期記憶を分ける

ここからは、2ヶ月試行錯誤して「これは効いた」と感じた、実装レベルのコツを2つ共有します。

1つめは、長期記憶と短期記憶を分けて設計すること。

きっかけは、AIを使い込めば使い込むほど「これ、どんどん人間っぽくなってくるな」という実感でした。そこから「じゃあ、人間が持っている記憶の階層を、そのままAIにも与えてみたらどうなるんだろう」と思って、設計に組み込んでみたのが出発点です。

人間の記憶って、改めて考えると面白い構造になっています。

  • 1〜2週間以内のこと:考えるまでもなく即答できる
  • 1ヶ月くらい前のこと:「あー、なんだっけ?」と一瞬考えてから引き出す
  • もっと前のこと:呼び出しに手間がかかる、ときに出てこない

AIにも、同じように時間軸で階層を分けた記憶を用意してあげる、というイメージです。

  • 短期記憶:ここ数日〜数週間のやり取りを圧縮した”セッションサマリー”
  • 長期記憶:それ以前に蓄積された、大規模な情報

両方とも「会社の情報」なんですが、アクセスのレイヤーを分けるのがポイントです。鮮度が高く、いつでもサッと参照される短期側と、必要なときに掘り起こしにいく長期側。

この2層に分けて設計すると、AIが「今の文脈」と「奥にある過去の蓄積」を混ぜずに扱えるようになります。短期のノイズで長期アーカイブが汚れたり、逆に毎回全履歴を舐めにいって場当たり的な答えになったりする、という失敗が減る。

多くの企業のAI導入では、ここが一緒くたになっています。時間軸で記憶を切るというシンプルな発想が、意外と効きました。


コツ② AIのために「箱」を作ってあげる

もう1つ、効いているのが、AIのために”箱”を用意してあげるという発想です。

AIに「会社の情報を集めてきて」と投げても、集まりません。どの情報を、どこに、どういう形で入れるか。入れ物のかたち=箱を先に用意してあげる必要があります

  • 顧客情報はこの箱に、この形式で
  • 案件の経過はこの箱に、時系列で
  • 経営判断はこの箱に、この粒度で
  • 個人メモはここ、共有知はこっち

一見するとただのフォルダ設計の話に見えるのですが、本質はAIに対して「何をどこに置いていいか」を制限してあげる作業です。

制限があるから、AIはどこを読めばいいか迷わないし、メンバーもどこに書けばいいか迷わない。箱を作って、そこに情報を格納していく仕組みができた瞬間に、一次情報がはじめてフロー(流れて消えるもの)からストック(資産)に変わります

箱が無いまま「AIに聞けば答えてくれる」と期待すると、ほぼ確実に形骸化します。箱が先、AIが後。この順番は崩さないほうがいい。


重要なのは、ツール選びではなく「AIデザイン」

生成AIツールは、これからも猛烈なスピードで進化していきます。

今日Claude Codeが強くても、半年後・1年後には、また別のプロダクトが頭を取っている可能性が高い。

だから、企業がこれから投資すべきはツールそのものではなく、**「AIをどう設計するか=AIデザイン」**だと考えています。

  • 一次情報をどこから・誰が集めるか
  • 短期記憶と長期記憶をどう分けるか
  • どんな箱を用意して、どう制限するか
  • セキュリティと運用ルールをどう重ねるか

この設計がある会社は、ツールが変わっても乗り替えられる。設計がない会社は、新しいツールを入れるたびに毎回ゼロからやり直すことになります。

ほとんどの企業で、この「AIデザイン」の議論がまだ真剣に始まっていません。


料金と規模感について(参考)

参考まで触れておくと、Claude Team の Standard プランは月$25/人から。年額契約にすると$20/人まで下がります(年契約はオススメできませんが…)。経理を含めて13名規模で、月数万円台から始められるレンジです。

UNISPOTは上位プラン($125/人/月)を想定しています。私自身は元々個人Maxプランでしたがチームプランの上位プランを使用しています。


UNISPOTが次にやること

UNISPOTは今後、地方・ローカルの製造業、とくに売上50〜200億円規模の企業に対して、経営レベルでAIを取り入れていく支援を推進していきます。

すでに富山県内の2社で、経営層からのトップダウンでのAI導入を進めている最中です。ここから1〜2年かけて、定量的な実績をつくっていくフェーズに入ります。


この2ヶ月を振り返って

思い返すと、この2ヶ月は、UNISPOTにとって本当に大きな方向転換の期間でした。

自社の全社導入も、地方製造業への支援も、評価制度の再設計も、同じ時期に同じ思想で動き出した。バラバラに見えて、どれも根っこは「会社としてAIをどう設計するか」という一本の線の上に乗っています。

この2ヶ月、私自身は、経営者としての視点とプレイヤーとしての視点の両方を行ったり来たりしながら、来る日も来る日もトライアンドエラーを繰り返してきました。構想を組んでは自分で触り、触っては壊し、壊しては組み直す。

正直に書いておくと、この試行錯誤の時間自体が、純粋に、ものすごく楽しかったです。

いい2ヶ月だったな、と今日時点で言えます。

そして、ここからがむしろ本番だなと。2〜3年後に振り返ったとき、「あの2ヶ月が分岐点だった」と言えるような期間になる予感があります。

楽しみです。


この記事を書いた人

海老 真成 / UNISPOT株式会社 代表取締役
2019年、富山で起業。Web制作・広告運用・採用支援を主軸に、現在は地方の製造業・BtoB企業向けのAI導入支援を推進。

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